変形性肘関節症

症状

変形性肘関節症画像

変形性肘関節症とは、肘関節にあるクッションの役目をしている軟骨が擦り減り、徐々に肘の骨が変形して痛みや肘の関節の動きの制限などが現れる疾患です。症状初期の頃は肘を動かすと、若干の痛みを感じる程度ですが、軟骨が擦り減りすぎて骨棘と呼ばれる部分がでてくると、耐えられないほどの痛みになり、日常生活を送ることが困難になります。
また、肘関節をうまく曲げ伸ばしできなくなるため日常動作に制限がかかることもあります。変形した骨によって神経がこすれることもあり、尺骨神経が障害されることもあります。

原因

変形性肘関節症の原因は、年齢を重ねるにつれて長年の使い過ぎが蓄積され発症するケースや激しいスポーツなどによる外傷にて発症するケースがほとんどです。

治療方法

変形性肘関節症の治療の基本は保存療法になります。
変形が軽度の場合には、肘周りの筋肉トレーニングやストレッチ、装具の着用などを行います。肘周囲の痛みや腫れが強い場合には、具体的には三角巾などを使用して肘をなるべく動かないように固定した上で、湿布や消炎鎮痛剤などの内服を行います。肘を動かさなくても痛みが強い場合は、ステロイド製剤の局所注射を行う場合もあります。
保存的療法が奏功しない場合には、手術治療を検討します。
手術の方法としては、遊離体摘出術、関節形成術や人工関節置換術などいくつかあり症状に合わせて術式を選択します。
尺骨神経の障害、特に指が動かしづらくなっている場合には、早期の手術を検討する必要があります。

野球肘

症状

野球肘画像

野球肘とは野球の投球動作が原因で発症する肘の痛みの総称を意味します。野球肘には痛んでいる部位に応じて2種類あり、①内側型、②外側型に分けられます。発症する割合的には内側型が多く肘の内側では、靭帯、腱、軟骨が「牽引」される事により痛みます。肘の外側では、投球をする際に肘にある骨がぶつかり合うことで、間の骨軟骨が剥がれたり、痛みが生じます。肘の後方でも骨・軟骨が痛みます。野球肘になると痛みは勿論、肘の曲げ伸ばしがスムーズに出来なくなるため可動域が制限されてしまいます。場合によっては痺れなどの神経症状が現れます。

原因

野球肘の原因は肘関節の使い過ぎによる、軟骨の障害です。具体的には、過剰な投球数による肘のオーバーワークやそもそも肘に負担のかかりやすい投球フォームである可能性が高いため、治療を進めると共にフォームの改善を同時に行う必要があります。
実際に野球肘が発達するかどうかは、成長期であるかどうかや体の左右差や姿勢の異常、筋肉や関節の硬さや弱さ・ゆるみなどの他、投球フォームも深く関与することが知られています。

治療方法

保存的治療を開始して2~3か月は炎症改善や軟骨回復を目的として患部を安静にします。
その後徐々にリハビリトレーニングを実施して、筋力と柔軟性の改善を行ってきます。
野球肘では症状や予測される休息期間、症状の進行状態などによっては、手術が勧められることもあります。

予防対策

野球肘にならないためには常日頃からストレッチを行い、肘に柔軟性を持たせておくことが重要です。練習の前後は勿論ですが、お風呂に入った後などにも身体が温まっている状態でストレッチを行うことも効果的です。
肩甲骨から肘にかけて効果的なストレッチを行うことで投球動作に固さがなくなり、肘に集中していた負担が分散するようになるでしょう。
また、投球動作をチェックし、肘にストレスが加わっていないかを確認する必要があります。

肘部管症候群(尺骨神経障害)

症状

肘部管症候群(尺骨神経障害)画像

肘の内側の部分で、尺骨神経という神経が傷むことで、小指側にしびれがきたり、手の細かい動きが上手にできなくなる疾患です。尺骨神経障害と呼ばれることもあります。
初期は手首あたりから先の小指側がしびれますが、薬指は小指側の半分しかしびれません。肘を曲げていると症状が強くなるのが特徴です。症状が進行すると、箸が使いづらい、ボタンをかけにくくなる、顔を洗う時に水を手にためられないなど指先の細かい動きが下手になってきたり、手の筋肉が痩せてきたりします。手の筋肉がやせて、小指と薬指の変形が目で見てわかるようになります。

原因

肘の内側で尺骨神経が慢性的に絞扼、あるいは牽引されることで発症します。
その原因は、加齢に伴う肘の変形、子供のときの骨折による肘の変形、野球や柔道などのスポーツ、大工や工場などの仕事による肘の長時間酷使などが挙げられます。

治療方法

まずは肘の安静・薬物の投与など保存療法を行います。
保存療法が効かない・急速に症状が悪化するケースでは尺骨神経を圧迫している靱帯の切離や骨棘ガングリオンの切除を行います。進行の早さが特徴です。
神経の緊張が強い場合には、骨を引っ張ったり神経を前方に移動させる手術を行います。

肘内障

症状

肘内障とは、肘の靭帯(輪状靭帯)から肘の外側の骨(橈骨頭)が外れかけた状態のことです。いわゆる亜脱臼を起こしてしまった状態のことで、一般的に腕が外れたり、肘が抜けたりする状態のことをいいます。ただし、脱臼ではないためX線(レントゲン)検査では、骨や関節に異常は認めません。
1歳から3歳ころの子供に多く、少しでも動かすと、激しい痛みに襲われます。
肘内障を起こすと肘をやや曲げて腕を下げたまま動かそうとしません。肘を動かそうとすると痛がります。反対の手で手首を支えて肘を動かさない様な仕草をします。

原因

肘内障画像

小さい子どもの体は発達途中のため、肘の輪状靭帯と橈骨頭はしっかり固定されていません。そのため、子どもが両手を挙げた状態で勢い良く両手を掴んで引っ張り上げる遊びをしている、子どもの両手を持ってぐるぐる回す遊びをしている、危険を避けるために子ども腕を引っ張った時、洋服を勢い良く脱がせる時など、このようなことがきっかけで亜脱臼を起こすことがあります。また、なかには寝返りをきっかけに肘内障を起こすこともあります。

肘内障にならないための予防方法

一度、肘内障を起こしてしまった子どもは、その後も肘内障を繰り返しやすくなってしまうことがあります。予防としては、両親が手をつないで歩いているときはできるだけ腕を引っ張らないように注意して気をつけてください。

治療方法

肘内障の治療は、医師による徒手整復術が行われます。整復術では特に手術や全身麻酔などは不要で、診察室で数秒の短時間程度で終了することがほとんどです。